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■【SS】 馴れ初め

自キャラですが、最近やけにこの二人が好き。

てなわけで、蒼太編より勢馬のお話です。






 オレが師匠である秋月蒼太に惚れたのは、はっきりとは覚えていない。
 ただ、出会った時の印象は、華奢で脆そうで女みたいな色香があって……
 馬鹿みたいに強かった。
 そのうえ、傲慢だし短気だしすぐ寝るし。
 オレより十歳以上も年上のくせに、すげぇガキっぽくて、すぐにケンカになった。
 初めは蘭慶先生も慌てて止めてくれたけど、しょっちゅうケンカになるから、今ではもう呆れてただ見ているだけ。

 ある夏の日のこと。
「木刀勝負して、負けた方が水汲み♪」
 だなんて師匠は言ってたけど、オレが勝てるわけないから、結局水汲みに行ったのは、オレ。
 帰ってきたら案の定、あいつは縁側で寝ていた。
 風に揺れる木漏れ日に照らされた師匠の寝顔に、オレは思わず胸を高鳴らせ、そっと顔を覗き込んだ。
 改めてよく見ると、本当に端正な顔立ちだ。あの丸くて大きな目は閉じられているが、意外に睫毛が長く、ふっくらとした唇は紅を塗ったかのように艶やか。
「……ん」
 師匠が寝返ると、オレは慌てて後ろに下がった。
 だが、師匠が起きる気配はない。相変わらず無防備にスヤスヤと寝息を立てている。
 寝返ったせいで、襟元も裾もはだけ、白く艶めかしい胸元と内股が顕わになって、オレの視界に飛び込んできた。オレは息を飲みつつも、そこから目を離せなかった。
 心臓が高鳴る。オレは無意識に、再び師匠に近づき、無邪気な寝顔にそっと手を伸ばした。
 白く柔らかい肌。
 触れただけで壊れそうな繊細さなのに、《玄異門》の中に現れる化物達に物怖じせず、冷徹なまでな剣を振り続ける。
 こんな綺麗な身体のどこに、それだけの力があるのやら。
 そう。綺麗……
 少し茶色がかったさらさらな髪の毛も、表情豊かにころころ変わる顔も、すべてが愛らしい。
 もっと見たい。もっと触れたい。もっと近くで……
「……勢馬?」
「わあぁあぁああぁっっ?!」
 突然声をかけられ、オレは自分でもわけのわからない悲鳴をあげ、後ろへと飛び退いた。
「なんだよ、起き抜けにうるせぇなぁ…」
 未だ寝惚け眼ではあるが、だるそうに身体を起こし、頭を掻きむしる師匠。
 その姿には、残念ながら先程までの色気などどこにもない。オレは少しほっとしたような、残念なような気持ちになった。心臓の鼓動が妙に早いのは、突然起きた師匠に驚いただけで、他意はない。
 ……ないってば。
 それはともかく、師匠が袖口で口を押さえ軽く咳き込んだ。オレの顔を一瞥ただけで、また顔を伏せる。
「勢馬。水は汲んできたのか?」
「あ、ああ……」
「悪いが、一杯くれないか」
 顔は伏せていてよく見えないが、あまりにも精気のない色をしている。本人も自覚があるから、顔を伏せてオレに見せないようにしているのだろう。
 師匠は何も言わないが、蘭慶先生からは、生来、師匠の身体が丈夫ではないことは聞いていた。
 オレは黙って、言いつけ通りに水を汲みに行った。
 途中、背中越しに師匠の様子を垣間見ると、口から吐き出したモノを手拭いで拭っている。
 オレに弱みを見せたくないのか、心配をかけたくないのかは、わからない。
 でも、ずっと一緒にいるんだから、こんな時くらいは頼って欲しい。オレは不肖の弟子かもしれないけれど、師匠の元を去りたいと思ったことは一度もない。
 理由なんて……わからない。
 まあ、オレも辞めたところで、行く宛てもないけれど。
「師匠。はい、水」
 オレは湯飲みにいれた水を、師匠の前に差し出した。
「ありがとう」
 子供のような愛らしい笑顔で、微笑みかけられると、それだけで心臓がまた高鳴る。
 オレが持ってきた水と共に、蘭慶先生が調合した薬を飲んだ。
 薬と水を飲み終わると、また何度か空咳をしていたが、それが治まると顔色に精気が戻った。
「よっしゃ! 目も覚めたし、もう一稽古すっか」
 二度三度と頬をはたいて気合いを溜める秋月蒼太の顔は、『師匠』としてのそれとなっていった。
「ええっ? も、もう少し寝てた方が……」
「なんだ? 俺が寝惚けてないと勝てないとか、寝言抜かす気か?」
「違っ……!」
 オレが心配しているのは、あんたの身体のほうだ!
 と、怒鳴りたいのは山々だったが、オレが言葉を続けようとする前に、師匠が不敵な笑みを浮かべて言う。
「なら、俺は空拳でいいから、おまえは真剣でも木刀でも好きなものでかかってこい。負けた方が夕飯の準備。いいな?」

 その日は、頭に大きなコブを作ったオレが、夕飯の支度をする羽目になったのだった。


【おしまい】
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