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■星祭り (蜀山奇譚 胡話)

蜀山奇譚』の後日談です。
単発でも読めると思います。多分(マテ

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「青霞、ちょっと来てご覧」
 師姉の怜秀が珍しくその怜悧な顔に喜色を浮かべ、掃除中の青霞を呼び寄せた。
「何でしょう」
 青霞は掃除の手を止め、手招きされるままに怜秀の後に着いていく。
 本当は罰で言いつけられた掃除なので、途中で放置したことが師匠の白髪大仙に知れたら大事になるだろう。しかし、今の青霞は、そんな師匠にささやかでも抵抗したい気持ちにあった。それに、あの威厳あるしかめっ面の師匠も、怜秀にはどうにも強く叱れない。怜秀も青霞もそれと知っているから、あっさりと仕事を放棄している。
 燭台の明かりだけの薄暗い洞府と違い、外は満天の星空で昼間のように明るかった。
「うわぁ……」
 青霞が、感嘆の声をあげ、空を見上げる。怜秀はその顔を、満足げに見つめていた。
 新月のため、月明かりのない分、星のひとつひとつが、はっきり見える。
 星の位置が明らかに回転するまで、二人は飽きることなく星空を見上げていた。
「青霞。眼を閉じてご覧」
 怜秀にそう言われ不思議そうな顔をしていると、怜秀は青霞の双眸に手をかざす。
 突然、青霞の身体が空高く引っ張り上げられる感覚に囚われた。
「え? え、え?」
 天地の感覚すらわからなくなり、身体の中までひっくり返りそうになった頃、袖を引かれて我に返ることができた。
「いいぞ。眼を開けろ」
 その声は怜秀のものではなかった。
 だが、青霞にとって、どこか懐かしく愛おしい声に、訝しげに思いつつもそっと眼を開いた。
 星空の中に浮かぶその姿は、怜秀ではない。
 荘厳な自信に満ちあふれた、若く、逞しい青年武将の姿。
「翔英様…!」
 忘れようはずもない。
 会いたくて会いたくて仕方のなかった、その姿。
 それがために、師匠に叱咤され罰を受けようとも、決して忘れられることもない、その顔。
 翔英は、自信たっぷりの笑顔で、青霞に手を伸ばしてきた。
 青霞は恐る恐るその手を伸ばして、掴んだ。
 二人は手を取り合って、星空の中を飛んだ。
「翔英様…」
 翔英はただ微笑むだけで、答えない。それでも、翔英と二人きりでいるということに、青霞は胸いっぱいの想いだった。
 今まで黙って青霞を見ていた翔英が、口を開く。
 しかし、その声は言葉となって青霞の耳には届かない。
 そのことに不安を感じた青霞は、眉をひそめて翔英を見つめる。
「翔英様…?」
 青霞の心の不安が黒い渦となり、翔英の姿と星空を吸い込んでいった。
「翔英様!!」
 憔悴に駆られた青霞が、消えゆく翔英の手を伸ばす。
 届け。届いて!

 パンッ!

 目の前で怜秀が両手を叩く音で、青霞は我に返った。
 気が付けば、先程怜秀と星空を見ていた洞府の外から、一歩も動いていない。
 だが、星の位置が随分と変わっていた。
「……戻るか。付き合わせた礼に、私も掃除を手伝おう」
 怜秀が寝ころんでいた青霞の手を取って、その小さな身体を起こしてくれた。
 先程繋いでいた、ごつごつとした武人の手とは違い、柔らかく繊細な女性の手。
 二人は手を取り合い、洞府の中へと戻っていった。


「青霞…?」
 夜中にふと目が覚めた翔英は、半ば寝惚け眼で寝台を見回す。
 窓から空を見上げれば、振るような満天の星空。
 あそこを、青霞と共に飛び回った気がする。
 それが夢だとしても、手に残る小さく柔らかい感触は、忘れようもない。
「機嫌の良い星たちが、夢を見せてくれたのか」
 まるで祭りのように賑やかな星空は、まだまだ輝き続けていた。



          【終劇】





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