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■赤蜻蛉 ~蒼太編回顧録~

HINOMOTO Wizardry ~蒼太編~』の後日談です。
先に↑こちらから読むことをおすすめします。


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 秋月蒼太が急逝した翌日から、夏の気配はほとんどなくなり、朝晩が肌寒く感じるようになった。
 生前から「墓なんかいらない」と笑って言っていた蒼太だったが、石のひとつでも置きたくなるのは、残されたものの心境である。
 そうして並んだ九つの大小さまざまな石が、山の中腹に並んでいる。
 歴代の天翔迅雷流継承者の墓である。
 蒼太の葬儀を終え、彼の亡骸は土に埋められ石が乗せられた。墓は不要と言っていた蒼太へのせめてもの趣旨返しとして、墓碑に銘は刻まない。
 勢馬は、一番新しい石の前に座り、線香と酒をたずさえ手を合わせる。
「……結局、あんたには敵わないままだったな」
 寂しげに笑って顔をあげると、勢馬は愛おしげに新しい墓石を撫でた。
 勢馬が愛でた白く柔らかい肌の感触ではなく、硬くごつごつした文字通りの岩肌ではあるが、これもまた蒼太なのだ。
 たった一度きりになったが、押さえきれなかった勢馬の欲情を、蒼太は慈愛をもって受け止めてくれた。
 常に死神にまとわりつかれていた蒼太にしてみれば、残り少ない時間で、勢馬にたくさんの事を残したかったのである。欲が深いと言われればそれまでだが、蒼太がそれだけ勢馬の事を愛していたということだ。
 師匠として。育ての親代わりとして。愛した男として……
 思えば喧嘩ばかりしていた。
 でも、その力を稽古の方に昇華していったのは、秋月蒼太という師匠の導きのおかげである。
 十代目天翔迅雷流伝承者・秋月勢馬の名に恥じぬよう、これからも精進に励むと、勢馬は墓前に誓った。
 立上がり様、勢馬は素早く抜刀して、空気を斬った。
 蒼太ほか、歴代の天翔迅雷流継承者から受け継いできた技を、彼らに見てもらうために。
 剣を振り、技を繰り出していたそのとき。
『ほら、また足の動き!』
 風の音かもしれない。
 しかし、勢馬の耳には、はっきりと聞き取れた。
 愛おしいあの声。
 なるほど。確かに、半歩踏み込みが足りない。
 蒼太には、よく怒られたものだった。
 勢馬は、懐かしむような笑顔を浮かべ、新しい石に目をやった。
 秋の訪れを告げる赤蜻蛉が、蒼太の墓石の上で羽を休めている。
 赤蜻蛉は、大きな赤い眼で、じっと勢馬を見つめていた。

                                                【終】




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